前回のアーバスキュラ菌根菌の記事で、アーバスキュラ菌根菌であるグロムスと共生すると、宿主植物が利用できなかったリン酸や地中深いところの養分を利用できるようになる。
という内容を記載した。
菌類の土壌からの養分の吸収の仕組みは凄いものがあり、鉱物質に吸いにくい微量要素は菌根菌を介してかもしれない。
そんな菌根菌だけれども、菌である上、土壌中のことなので、栽培中の作物を抜いて確認ということがしにくい為、感染のパターンだけ把握しておいてその環境に近づける。
ということに意識を置いてみよう。
まずは大雑把に作物と菌との関係を見ておくと、菌根菌も一種のエンドファイトと見立てると下記の記事に記載した条件となるだろう。
作物(宿主植物)の根の周りに吸収しやすい水溶性の養分が多い場合、特に硝酸態窒素や吸収しやすい一部のアミノ酸がふんだんにある場合は共生関係を形成しないだろう。
次に菌側の方を見ると、菌は植物と共生関係を築いた際に植物側から糖分(ブドウ糖)を頂くとのことで、菌の周りにすぐに利用可能なブドウ糖やショ糖がある場合は共生関係を形成しないらしい。
植物側から共生の際の信号のような物質を合成するという話もあるけれども、ここでは触れないことにする。
何度も書くようだけれども、これらの話を見ると、栽培の常識であるNPKの概念が菌根菌との共生を程遠いものにして、共生されないが故に諸々の養分を吸収しにくい状態を生み出している。
話題に挙がっている菌が最も優勢になるような環境を設けないという意味がないというのは栽培時の常識で、微生物資材を利用する時にその菌が活発化出来ないような環境を事前に設けなければ、その資材は溝に捨てるようなもの。
これは菌根菌にとっても同じことが言えるだろう。
先日、菌根菌の研究をしている方と知り合う機会があり、当サイトでよく挙がるネギの菌根菌のことを伺ったところ、ネギの菌根菌はネギのみと共生するわけではなく、緑肥の様々な種と共生関係を形成することが出来るという。
菌根菌をエンドファイトと見立て、エンドファイトの鉄則として様々な草が生えた土地程、共生菌というものが増えるという規則があるので、
栽培中の作物以外の草はすべて除草剤で枯らすということをせず、通路等の栽培していない場所では緑肥を育てるという選択をするだけでも共生菌の視点から見ると非常に良い手になるらしい。
緑肥のクローバの根圏ではたくさんの共生菌が集まるという報告がある。
緑肥は物理性の改善や除塩以外でも、肥料効率の観点だけでみてもまだまだ可能性がありそうだ。