SNSのタイムラインを眺めていたら、とても印象に残った研究のプレスリリースがあったので今回はその研究成果が広まって欲しいという願いを込めて紹介する。
紹介したい研究結果というのは、
で日本語での解説は(研究成果) コーヒー粕で土壌消毒 | 農研機構になる。
実験室でのスケールになるが、
多くのトマト(やナス)農家を悩ませる青枯病の発症をコーヒー粕を利用することで抑えることが出来たというもの。
実際の反応はコーヒー粕主体というわけではなく、
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コーヒー粕に含まれるコーヒー酸(リグニン合成の初期の芳香族カルボン酸)と二価鉄(報告内では鉄塩)により、ポリフェノール鉄錯体という形でキレート化させ維持し、
過酸化カルシウムの粉末を反応させると、フェントン反応により、
CaO2 + 2H2O → H2O2 + Ca(OH)2
H2O2 + Fe2+ → ・OH + OH- + Fe3+
強力な酸化作用のある活性酸素(・OH)が発生して、この活性酸素が青枯病の原因菌を殺菌する。
※フェントン反応については下記の論文をご覧ください。
Fenton反応とヒドロキシルラジカル THE CHEMICAL TIMES 2015 No.2(通巻236号)
この結果で興味深い点が、ポリフェノール鉄錯体 + 過酸化水素(H2O2)では結果がいまいちで、ポリフェノール鉄錯体 + 過酸化カルシウム(CaO2)経由で過酸化水素を発生させると顕著な効果が見られたことだ。
過酸化カルシウムと言えば、このサイトで何度も話題に挙がっている酸素供給剤だ。
過酸化カルシウムから活性酸素が過酸化水素が発生して、植物が持つカタラーゼ反応によって過酸化水素から酸素を得る。
カタラーゼを持たない土壌の微生物(グラム陰性細菌等)は活性酸素によって死滅されるという便利な肥料である。
コーヒー酸はコーヒーという名ではあるが、リグニン合成の初期のカルボン酸であるため、様々な植物で合成されるため調達は簡単。
後は二価鉄だが、研究報告では鉄塩となっていたが、二価鉄は腐植酸鉄という形で販売していることが多いので、フェントン反応から判断すればこれで問題ないはず。
懸念事項があるとすれば、フェントン反応で発生する・OHは植物の根にも何らかの影響を与えるはずなので、それに耐えられるように日頃からストレスなく育てる必要があるということか。
今回の内容は土壌消毒の意味合いが強いから、栽培開始前が主なので懸念しなくても良いか?
なにはともあれ、今回の研究報告に後押しされ、青枯病の被害で経営が圧迫される方が少しでも減ることを願います。
追記
土壌中で強烈なフェントン反応を起こせば、青枯病菌(細菌)以外の良い菌も死滅するのでは?と意見をしていた方がいたが、極端に増えた青枯病菌の数減らしとして有効で、様々な菌を根絶する程の作用はないだろう。
クロルピクリンによる土壌消毒も似たような作用で、土壌微生物の根絶はできない。
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