土作り + レンゲ栽培 + 中干しなしの田がそろそろ収穫の時期を迎えようとしているが、
若干の倒伏が見られるようになった。
ここで栽培している方は例年よりも穂に重みを感じるが、中干しをしていないために夏場に肥料が効き過ぎたことに因るのではないか?という意見が挙がり、やはり中干しは必要ではないか?との事になった。
中干しの有無については諸々を整理した後に改めて方針を決める事にしよう。
※同じ肥料で栽培している周辺の田
冒頭の田は写真ではわかりにくいが、茎や葉が太く、各々の葉がしっかりと上を向いて展開をしているので、ケイ酸がしっかりと効いている状態となっている。
昨年と大きく異なるところを挙げると、
田起こし前に育てていたレンゲの背丈、つまりは鋤き込む有機物量が例年と比較して圧倒的に多かったということ。
鋤き込み時にベントナイトで吸着をさせて、物理性の改善を徹底したが、レンゲが行った窒素固定分の有機態窒素の量が大幅に増加している。
合わせて、鉄を多く含むベントナイトを投入しているので、田で窒素固定を行う鉄還元細菌の環境が整ったと言える。
後、これは期待の方が大きいけれども、レンゲによって土壌の生物性が改善され、イネのエンドファイトによってイネ自身が窒素固定を行えるようになったという可能性もある。
今挙げたものだけからでも、物理性の改善 + 中干しなしの連鎖で肥料の効きは大幅に増加することになる。
では、田全体の窒素固定能の増加に対して中干しをして肥効を調整すべきか?を検討する事になるが、それは中干しのメリット・デメリットを挙げてからでないと危険だ。
ということで先にメリットから挙げると、
・田を嫌気下にすることで発根を抑制するガスを中干しによって抜いて発根を促進する
・土が乾燥することで、土壌中にある肥料分が水に溶けている量が減り、イネの根が吸収できる肥料分を減らす事が出来る
→肥料の吸収を抑えれば、オーキシンとサイトカイニンの関係で発根が促進される
※中干しにより水を求めて発根が促進されるという話題はおそらく植物ホルモンの作用からきているはず
・タニシ等の田んぼの生物の活動を抑える
中干しのメリットの上二つは物理性を改善すると、土が保水性を持ってしまうため効果が薄まってしまうという事情があるため、レンゲで物理性を上げると決めてしまった時点で中干しのメリットはなくなってしまう。
それでは次に中干しのデメリットを挙げると、
・猛暑日の中で根元に水があることで蒸散が活発になりイネの高温障害を回避できる
・イネに甚大な被害をもたらすカメムシやウンカの天敵が増える
中干しのメリットとデメリットを天秤にかけた場合、デメリットの影響の方が大きく、中干しはしない方が良いという結論に達する。
であれば、
冒頭の倒伏対策はどうすれば良いか?ということになるけれども、これは施肥量を減らせば良いだろう。
どれくらい減らせば良いか?は経験値をつまなければならないけれども、元肥の一発肥料を少なく、追肥で補うようにすれば良いけれども、これは理想論で作業量が増えてしまうので宜しくない。
減肥量の目安を見つける事がこれからの課題だろう。
肥料の製造、運搬や散布には燃料を要し、天敵が少ない田では農薬の散布量も増え、農薬も肥料同様、製造、運搬や散布に燃料を要するので、肥料や農薬の使用量が減ることとは昨今のSDGsに直結する。
物理性の改善後のレンゲで光合成による有機物の合成量が増し、それを鋤き込むことで田の埋没炭素量が増えることも二酸化炭素の貯蔵庫としての役割となるため、これもSDGsに直結する。
今回は触れていないが中干しなしの田の嫌気環境が続くと、温室効果ガスであるメタンの発生が増え、世界の情勢から稲作が悪の風潮が出始める予兆があるが、今回の途中に挙げた鉄還元細菌により、これまた強烈な一酸化ニ窒素の発生を抑える事になるため、物理性を改善した状態では対象外となる可能性が高い。
※メタンは土壌の物理性の改善を徹底していれば、発生量は減るとされている
物理性の向上 + レンゲの栽培 + 稲作の減肥 + 中干しなしの栽培技術の確立は急務であることは間違いない。
余談
収穫後の藁の腐熟やジャンボタニシ対策で石灰窒素を使用すべきではない。
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