緑泥石から土の形成を考えるの記事までで2:1型粘土鉱物である緑泥石について見てきた。
緑泥石は2:1型でありながら、スメクタイト(モンモリロナイト)等の2:1型粘土鉱物のような高いCECはではない。
その理由は
他の2:1型であれば、層間水がある箇所にMg八面体等の層間物質が挿入されている為、層間水による陽イオン交換性を発揮しないことが要因である。
ただし、風化と有機酸による処理を経ると緑泥石はスメクタイトのように層間水が形成されて、膨潤性と陽イオン交換性が生じるとされる。
話は変わって、
粘土鉱物が出来る場所、海底風化の記事で海成粘土では粘土鉱物の形成中に海水に含まれるカリウム、マグネシウムや硫酸を貯め込むという話題があった。
※硫酸は硫酸鉄として蓄積
これらの内容によって、
海底に堆積した火山灰から形成されるベントナイトの特徴がより明確になるはずだ。
何故ゼオライトではなく、モンモリロナイトを推すのか?でも触れたけれども、
巷では土壌改良材としてゼオライトを頻繁に見かけ、ベントナイト鉱山所有者曰く、ベントナイトは二流品として扱われて困っているという話がある。
※ベントナイト≒モンモリロナイト≒緑色凝灰岩として話を進める
ベントナイトのCECがゼオライトよりも低く、土壌改良効果が低いと判断されてしまうのが主な要因であろう。
ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトのCEC自体は決して低くない。なのに何故ベントナイトのCECは低いのか?
ベントナイトを粉砕したものを見ていると、緑色の箇所をちらほらと見かけ、おそらくこれは緑泥石と判断して良いだろう。
粘土鉱物の成分分析は粘土鉱物を微粒にして測定するらしいので、おそらく灰色と緑の箇所が混ざってから分析にかけるはずで、この予想に間違いなければ、CECの低い緑泥石もベントナイト全体のスコアとして反映されるはずである。
ベントナイトのCECの測定は緑泥石が足を引っ張ることになるけれども、ベントナイトは火山灰が海底(や湖底)に堆積したものであるので、海水由来のカリウムやマグネシウムを含んでいる事になる。
冒頭の話題に戻ると、
緑泥石は風化と有機酸による処理を経ると、モンモリロナイト並の膨潤性を得られる、つまりはCECが上がることになる。
更には海水由来のミネラルも含んでいる事になる。
ここで野菜の美味しさとは何だろう?カリウムの記事の話題を持ち出したい。
栽培が不調だと相談を受けて、その畑の土を見ると、カリウム不足であることが多く、カリウムの単肥を施すだけで幾分症状が緩和されることも多いそうだ。
栽培が不調であれば土を見直す。
土を見直す際に排水・保水といった物理性やCECといった化学性を見る為、ここで出来るだけCECの高い資材を入れたくなるけれども、
鉱物由来の微量要素が不足しているという視点を加味すると、
CECは少々低いけれども、鉱物由来のカリウムや微量要素を自然に補給出来るような粘土鉱物というのは大変ありがたい。
緑泥石由来の徐々にCECが上がるということも、連作で疲弊した土であれば、投入した様々な(化学反応を起こしやすい)肥料の影響を緩和してくれるのでこれまたありがたい。
やはり秀品率の向上には緑泥石は重要な要因になりそうだ。
補足
ベントナイトとゼオライトの比較で、ベントナイトの形を変えやすい特徴から水溶性のケイ酸の溶脱と作物の根からの吸収も期待している。
実地では水田にベントナイトを仕込むことで倒伏しにくくなったという報告がある。
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