京都府立植物園で見知らぬおばちゃんから質問されてからはじまったF1種子の話ですが、
せっかくなので遺伝子組み換え作物についての話も書いていきたいと思う。
F1種子は種に対してある程度以上の知識がなければ話題に挙がることはないが、
遺伝子組み換え作物はそういう知識がなくても話題に挙がる程定着しているワードであり、
F1種子以上に悪いイメージが付いている言葉でもあると思う。
遺伝子組み換え作物は人為的に生み出された生物だとかね。
今まで頭ごなしに否定している人は、
大概全く勉強をしていない様に見受けられる程、イメージ先行で話をしていた。
なぜそう思ったのか?というと、
植物の遺伝子組み換えなんて土壌中の微生物が頻繁に行っているし、
栽培したことがある人なら遺伝子組み換えされた植物なんて良く見かけるでしょ。
そう!
細菌由来の根こぶ病だよ。
写真 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Agrobacteriumgall.jpgより引用
根こぶ病
線虫、カビや細菌に感染されることで根が肥大化する病気で、
今回は細菌についての話を記載する。
アグロバクテリウムと呼ばれる細菌がいて、
この細菌が野菜の根に寄生する。
この時、上の写真の様に宿主の根を肥大化させるんだけど、
このコブに宿主が合成した栄養を集める様に仕向ける。
どうやっているかというと、
最初にアグロバクテリウムが根に感染する。
※アグロバクテリウムは上の図程の大きさはない。根と比較しても目に見えないぐらい小さい
根の細胞内に侵入したアグロバクテリウムは感染した宿主のDNAに根こぶを形成する塩基配列(遺伝子)を組み込む。
そして宿主は組み込まれた塩基配列に従って、冒頭の写真の様な根こぶを形成する。
この時、
宿主のDNAのどの箇所に挿入されるかまでは制御できないという超重要な注意事項がある。
細菌にとって宿主に根こぶを形成させて、そこに養分が貯まれば良いだけで、
宿主のDNAにある情報なんて知ったことではない。
例えば、挿入された塩基配列が宿主にとってちょうど葉を形成する情報がある場所だった場合、
葉は正常に形成されなくなる。
高校生物あたりで出てくるミスセンス突然変異だね。
途中から脱線したけど、
今回を通して何が言いたかったか?というと、
遺伝子組み換えは日常的に発生している。
この時、
組み換えされた方は土壌の微生物の遺伝子という生物の種間を越えた形質が組み込まれている。
植物のDNAに植物以外の遺伝子が組み込まれていても、
何も不自然なことではないってこと。
遺伝子組み換えは今回の話と大腸菌の耐性獲得の仕組みを使って行われるんだけど、
それはまた機会がある時にということで。