田の酸化還元電位の記事で酸化還元電位の視点から田の物質の変化を見てきた。
前回の内容で重要なのが、鉄(Ⅲ)は硫酸根よりも還元されやすいので、鉄(Ⅲ)がある時は鉄(Ⅲ)から還元されるで、硫酸根よりも還元されやすいものが常にあれば、田の潅水時に硫化水素は発生しないことになる。
時々見聞きする話で、田の土の物理性が改善されていれば厄介なガスは発生しないという話題があるが、酸化還元電位の切り口で見てみることにする。
土の物理性の改善で電子受容体になりそうなものを挙げてみると、腐植酸の基になるポリフェノール(キノン)がある。
腐植物質還元微生物の特性の把握と環境浄化への応用に関する研究|研究紹介|国立環境研究所のページで、環境中に広く存在する腐植物質が微生物による嫌気呼吸の電子受容体として機能し得ることが明らかとなっておりと記載されているので、田でもおそらく同様の現象があると見ていい。
あとは、腐植物質やポリフェノールが硫酸根よりも還元しやすければ良いことになる。
これをどうやって調べるか?
ポリフェノールと還元で真っ先に思い付くのが茶カテキンなので調べてみたら、段練等著 第一原理計算によるカテキンの酸化還元電位の理論予測 - J. Comput. Chem. Jpn., Vol. 20, No. 4, pp. 137–139 (2021)で茶カテキンの酸化還元電位についての記載があった。
慣れない内容であるので適切に判断出来る自信はないが、pHによりEcalcの値が変動し、アルカリ性環境下のカテキンのEcalcが硫酸根と同じぐらいで、酸性環境下におけるカテキンのEexpがプラスの数字になっている。
栽培環境でどのカテキンも還元力が低い状態になっているわけではないので、硫酸根周辺の酸化還元電位になると判断出来るかもしれない。
ただ、稲作というタイミングでカテキンなんて都合の良い状態になっているのか?ということを言いたくなる。
ここで苦味や渋みのタンニンの記事で記載した内容をピックアップしてみる。
ワインの赤色は
By Espresso777 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, Link
アントシアニジンとカテキンが重合したものになっていて、極端な話になるが更に重合したものがタンニン→腐植酸という解釈となる。
上の図では重合したものは酸により二つのポリフェノールに離れている。
この現象が稲作中に発生したら、栽培中にカテキンのようなポリフェノールがあることもおかしくなくなるし、重合した状態でも酸化還元出来る可能性もある。
ここまでの話から
昔の稲作ではタンニンを多く含むヤシャブシの葉を田の肥料にしていたという話は相当理に適っていることになる。
若い葉には比較的小さな(重合度が低い)タンニンが多いので、反応性は高いはず。
土の物理性を改善することで他に考えられることは、イネ自身の発根が促進して、根による鉄(Ⅱ)の酸化か、硫酸根の要求量が増えたということあたりか。
それか活発化した土壌の微生物らの硫酸根の要求量(消費量)が増えたとか