昨年、飛騨小坂の巌立峡を訪れた時に、案内所に居た方から、この川の水にはマグネシウム、カルシウムと腐植酸にキレートされた二価鉄が多い。
という話を伺い、
これらの養分が川から海へと流れ、海の生き物たちの養分として利用される。
という話も伺った。
先日、ブログの読者と話をしていて、ちょうどこの話題が挙がったので触れてみることにする。
最初に腐植酸について触れてみよう。
山の森などの木が朽ちた後にキノコ等のカビによって分解され生成される芳香族を含む有機酸が生成される。
この有機酸は腐植酸として扱われる。
川の作用は山の岩石を削り、岩石からミネラルがイオン化して溶け出す。
これらのミネラルは腐植酸に捉えられ(キレート化)、比較的安定した形として下流へと流れる。
腐植酸にキレートされたミネラルたちが海の生物らにどのように使われるのか?
検索してみたところ、河川を通しての陸から海への物質輸送 —腐植物質の特性と錯形成能—という論文が引っかかった。
上記論文から抜粋してみると、
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沿岸域のプランクトンの増殖には、陸からの栄養塩の供給が必要であり、その起源は陸上の有機物である。陸域から供給される鉄は、プランクトンの硝酸還元酵素や光合成色素の合成に大きく関与し、プランクトンの成長には欠かすことが出来ない成分である。この鉄を運ぶキャリアーとして、溶存有機物の大部分を占める腐植物質が重要であると考えられている
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※上記論文の河川水の溶存有機物研究の意義から抜粋
つまるところ、川の作用によってイオン化された山由来の鉄は海にいる光合成を行う生物らが活用しているということになるわけで、森で光合成が盛んに行われていれば、海での光合成も盛んになる。
という解釈をしてもあながち間違いではないと思われる。
海での光合成産物は海洋生物に利用されたり、海底へと沈降して蓄積されるわけで、川から流れ着いた腐植酸(炭素)や新たに出来た炭水化物によって大気中の二酸化炭素が消費されたことに繋がる。
大気中の二酸化炭素を減らしたいのであれば、森、川と海を俯瞰的に見ないといけないのだろうね。
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