遥か昔に植物が上陸にあたって獲得した過剰な受光対策という記事に引き続き、酸素発生型の光合成についてを投稿する。
東海大学出版部の藻類30億年の自然史 藻類から見る生物進化・地球・環境 第2版という本を読んでいる。
藻類について理解したくて、手始めに広く網羅している本を探したところ上記の本と遭遇した。
この本は500ページ近くあり、序盤が世界各地にいる様々な藻類の説明から、中盤で生物誕生から藍藻の誕生を経て、真核生物の藻類の誕生、最終的に緑色藻類の陸上への進出という流れで話が進む。
藻類だけでなく、現在把握している生物の整理もあって、はやめに読んでおけば良かった本の一つとなっている。
生物の革新をいくつか挙げるならば、海底にいた生物が光合成(初期は硫化水素から電子を得る)を獲得したことと、水から電子を取り出して酸素発生型の光合成を獲得したことだろう。
上記の本にも記載されていたが、生物が誕生した頃の海水にはおそらく鉄がFe2+イオンとして溶けていたと予想され、Fe2+によるフェントン反応が頻繁に発生したと予想されている。
これらの仮説を踏まえた上で、冒頭で紹介した本で印象に残った仮説(レーンの仮説)がある。
太古の海では、Fe2+イオンによる過酸化水素の発生が頻繁に起こっていたとする。
太古の生物らは自己防衛の一手として、カタラーゼという機能を獲得した。
カタラーゼの反応は過酸化水素を酸化させることで無毒な水に変える。
2H2O2 → O2 + 2H2O
多量に溶けていたFe2+イオンは後の酸素の大発生をきっかけとして、縞状鉄鉱床(BIF)の形成で減っていった。
話は現在の酸素発生型の光合成に移り、
酸素発生型の光合成の最初の反応は、太陽光のエネルギーを利用し、マンガンクラスター(Mn4CaO5クラスター)が水分子を強力に酸化し、電子を受け取るという荒業を行う。
カタラーゼの酸化に戻って、カタラーゼという酵素は補酵素としてマンガンとヘムを利用すると以前記載した。
ここでレーンの仮説に戻ると、水から電子を取り出す構造が、カタラーゼを重ね合わせたものに似ているらしく、ここから太古の生物は自己防衛の為に獲得したカタラーゼから、水を介してエネルギーを沢山得る機能を得たのではないか?という説が生まれた。
この仮説の真偽は今後の研究で証拠を積み重ねて判断するものであるが、光合成にとってマンガンというものが大事なものであるということは現時点でも伝わってくる。
他にも興味深い仮説が記載されていたが、それを紹介すると長くなるので今回の記事はここまでにしておく。