酵母とトレハロースで菌の細胞内でのトレハロースの働きについて触れた。


トレハロースは菌が高ストレス環境におかれた際に、細胞内でトレハロースを急ピッチで合成する。


トレハロースはエネルギー源であるグルコース(ブドウ糖)をつなげて、安定な形(エネルギー源として利用しないということ)にし、高ストレス環境で生理的に重要な酵素等のタンパクの不活性に対して、タンパクの間に入り込んで安定な状態にするという働きがあった。


菌が高ストレス環境から抜けるとトレハロースは速やかに分解される。




以前、バリダマイシンAという菌のトレハロース分解酵素を阻害する農薬を見た。

バリダマイシンAという殺菌剤


バリダマイシンAの作用点はトレハロース分解酵素(トレハラーゼ)阻害により病原菌のエネルギー源を枯渇させてしまうところにあるとされている。


バリダマイシンAを調べ始めた時はこの説明がしっくりこなかったけれども、トレハロースがタンパクの安定性の維持のためのシャペロンのような振る舞いという内容を読んでしっくりときた。


トレハロースは二糖だけれども、糖 = エネルギー源という考え方をしていてはダメなのだと。


糖はシグナルやシャペロンの要素もあるよということも常に意識しておかなければならないなと、トレハロースに触れて思った。




これらを踏まえた上でトレハロースの分解を阻害する意味を再び見てみると、菌は高ストレス環境に晒されると本来はエネルギー源であるグルコースを物質の安定の為に大量に使用する。

菌が高ストレス環境から逃れるとトレハロースを速やかに分解して再びエネルギー源として貯めておく。


トレハロースの分解を阻害するということは、菌の細胞内にエネルギー源としての糖に戻すことができないということで、新たな糖を調達出来なければ餓死してしまうということになる。


ということはだよ、例えば菌にとって心地の良い環境という条件下で作物に感染していたとする。

低ストレス環境ということになるのでトレハロースは合成されない。

この状態に対してバリダマイシンAは効くのだろうか?という疑問が生じた。


作物に感染した時の作物側の防御反応は高ストレス環境になるはずなので、菌にとって低ストレス環境になることは少ないだろうけれど…


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