殺菌剤を使用すると虫による食害被害が増加するの記事でとある植物に対して殺菌剤を使用すると、AM菌に影響を与え、植食性昆虫の被害が増加するという内容を紹介した。
AM菌といえば、椰子の実の脂肪酸と菌根菌の記事で脂肪酸のラウリン酸によって成長が活発になったという研究報告を紹介した。
ラウリン酸は動物、植物ともに普遍的にある脂肪酸らしいけれども、ナタネ油かすに含まれる脂肪酸は何か?の記事で植物の種類や組織によってラウリン酸の量に違いがあるらしい。
ふととある食品の成分を眺めていたら、ラウリン酸を多く含む発酵食品が目に付いた。
「チーズを科学する」(幸書房) - NPO法人チーズプロフェッショナル協会
上記の本の牛、羊および山羊の乳脂肪に含まれる脂肪酸という表で、ラウリン酸がそこそこ入っていて、羊 > 山羊 > 牛の順でラウリン酸が含まれている。
更に興味深い内容として、
牛乳中に含まれるラウリン酸の量が3.1 mg / Kgであって、
ブルーチーズに含まれるラウリン酸が1835 mg / Kgと非常に量が多い。
チーズは乳脂肪分を濃縮した食品ではあるけれども、
チェダーが 571 mg / Kg、
エメンタールが 68 mg / Kg、
カマンベールが 298 mg / Kgとどの微生物によってチーズが熟成されたか?によってラウリン酸の含有量が大幅に異なっている。
この内容を見る限り、共通のスターターである乳酸菌はラウリン酸の増加にはあまり関与していない。
エメンタールでラウリン酸が極端に少ないので、エメンタール特有のプロピオン酸菌はラウリン酸を減らす方向に作用しているかもしれない。
チェダーとカマンベールを比較すると、カマンベールのラウリン酸がチェダーの半分なので、ペニシリウム・カメンベルティもラウリン酸を減らす方向に作用しているかもしれない。
最後に圧倒的なラウリン酸の量のブルーチーズだけれども、
スターターの乳酸菌にある程度発酵させたら、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)と呼ばれる青カビ胞子を植え付けて熟成させる。
このカビはペニシリウム属の一般的な腐生菌で、自然界に広く分布し、土壌、腐敗する有機物から分離されたらしい。
Penicillium roqueforti - Wikipedia
話は戻って、植物が植食性昆虫に強くなるためにはAM菌の感染が必要で、AM菌はラウリン酸で増殖が活発になる。
そのラウリン酸は青カビ(ペニシリウム属)が何らかで関与している可能性がある。
ただし、カマンベールチーズに付くカビもペニシリウム属なので、ペニシリウム属であればどのカビでも良いというわけではなさそうだ。
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