先日のニュースで水田から発生するメタンについての話題があった。

メタンといえば強力な温室効果ガスとして扱われていて、農業では水田と畜産(牛)が挙がっている。

※水田でのメタンの発生については田の酸化還元電位に記載がある


水田でのメタンの発生を抑えるには、中干しを行うか、腐植の蓄積が有効であるとされている。


ここで興味深い話題があって、今までの知見を振り絞って腐植の蓄積を徹底的に行ってみたら、


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保水性が良くなりすぎて、田から水を抜いても土にヒビが生えなくなったどころか、水表面が乾かなくなったという現象に陥った。

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これらの内容を踏まえた上で触れたい話題がある。

水田からメタンの発生を抑える為に乾田(陸稲)で栽培できる田では乾田にしてメタンの発生を抑えるべきだという意見が挙がっている事について。


水田のメリットを挙げると

・少ない肥料(主に粘土鉱物や鉱物由来の微量要素)で栽培できる

・水を張っている期間が長い程除草作業が少なくなる

・高温障害に強くなる

・有機物(腐植)の蓄積能が高い

・pHの変動幅が小さい

ということがある。


一方、デメリットは

・メタンが発生する

・水を大量に使う

・鉄が溶脱しやすくなる(鉄の還元)

ということがある。


乾田のメリットとデメリットはちょうど水田の逆になる。


乾田を推し進めると肥料や農薬のコストが高くなり、これらの農業資材の製造、運搬や散布で用いる燃料から排出される二酸化炭素量が増える事は無視してはいけない。

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乾田は連作障害が発生しやすくなり、地力の低下も気にしなければならない。

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今回記載したい内容はこれからで水田が周囲に与える影響について気になった事を挙げる。




水田のデメリットとして挙げた鉄が溶脱しやすくなるという内容だけれども、下流環境で鉄を欲する生物への鉄の供給という重要な役割がある。

山の鉄が川を経て海へ


特に注目すべきは海まで到達した鉄が海中の藻類に利用されて光合成が活発になる生物ポンプだろう。

生物ポンプの面白い点は藻類が二酸化炭素を吸収して増殖した後、


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これまた二酸化炭素を利用して外殻(炭酸石灰)を形成する貝類がいるということで、それらの貝の死骸が海底に蓄積することで海底の生態系を豊かにするというものだ。

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今まで水田だったところを乾田にすることで、海への鉄の流入がどれ程減るかは知らないが、メタン発生に気を取られて、下流の産業に微細ながら蓄積性の高い影響を与えていたということになったら悲惨なので、乾田への移行はもっと慎重にやるべきではないかと思う。


水田は幸運な事に腐植を蓄積させると、メタンの発生は抑えつつ、減肥も出来て、秀品率や利益率が高まるという稀有な特性があるのだから。

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余談だけれども、畑作で土壌分析の結果を見ずにとりあえず石灰を撒いておこうという習慣をなくしていった方が良いと思う。

石灰過剰の土壌に石灰を投入して、石灰過剰による微量要素欠乏で虫や病気の被害が増えて、肥料や農薬の散布回数を増やすという悪循環が生じているという現状が日本各地で起こっている。


肥料や農薬の製造、運搬と散布には燃料を用いるのでその分だけ二酸化炭素を排出しつつ、石灰の方でも炭酸石灰を用いると中和反応で二酸化炭素を発生させてしまう。

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乾田にした時に上記の症状に陥るような気がしている。