※上の写真は過去のイネの写真
年々勢いが増すと予想される台風に対して出来ることはあるか?の記事で、年々猛暑日が増える中、稲作では高温障害によって米の収量や品質が低下する恐れがあり、高温に耐えられる品種の育種が急務であることを記載した。
高温で考えられる障害として、
高温による光合成の低下が挙げられる。
光合成の低下は気温の上昇により葉の気孔からの蒸散量が増加することを阻止するために、気孔を閉じて増産量を減らすことで、体内の養分の流動が停滞する事が考えられている。
※高温ストレスでアブシジン酸が増え、気孔の閉じに繋がる
※他にも光合成に関与する酵素群が温度に依存している可能性もある
体内の養分の流動性が減る事によって、葉内で発生する活性酸素の量にも影響を与える可能性があって、葉の寿命にも影響を与えている可能性がある。
これらの話から、
わざわざ暑い時期に中干しをする必要があるのか?を再び整理する必要がある。
中干しは嫌気環境下で発生するガスを抜く事で発根に対して悪影響を与える要因を除去するので、冬季にガス抜きをしていない環境では必須の行程であるのは間違いないが、高温時に葉の温度に悪影響を与えている可能性があることは意識しておいた方が良さそうだ。
※根から冷たい水を導管を経て葉に運ぶことで、葉温を適正の温度に下げることができるはず
レンゲ栽培後に田植えした田では、団粒性の向上によって中干しでまともにひび割れがなかったにも関わらず、葉色が落ちず、連日の猛暑の中でも高温に耐えている(ように見える)。
中干しが発根を促進するといったポジティブな行程であるのならば、レンゲ米の栽培の方が速くに葉色が落ちる事になるけれども、そうなっていない。
※観察対象が少ないので上記の判断は微妙
猛暑が続く中での稲作で、何かできることはあるのか?と検索をしてみたら、
ケイ酸質肥料が登熟期の高温処理水稲の葉温・気孔コンダクタンスおよびケイ酸吸収に及ぼす - 日本土壌肥料学雑誌 第81巻 第5号(2010)
という研究報告に辿り着いた。
表題の通り、イネがケイ酸を吸収することで、高温時の光合成が改善されたデータが取れたというものだけれども、興味深い事に中干し後の幼穂形成時にケイ酸の吸収量が増したという事が記載されている。
ケイ酸をあまり吸収できなかった株では、高温時の気孔の開きが少なく、蒸散量が減り葉温が上昇している可能性があるそうだ。
余談だけれども、この内容を読んだ時に、
緑泥石と
かんらん石が頭に浮かんだ。
もう一点あって、
写真:ねこのしっぽ 小さな生物の観察記録より引用
水田で落水と入水を繰り返した時、珪藻等の微細藻類はどうなるのだろうか?という事が頭に浮かんだ。
珪藻の殻は植物の根にとって吸収しやすい形になりやすい気がする。
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