技術顧問先の会社で肥料教室というものを開催していて、その時に挙がった質問でしっかりと把握しておいた方が良さそうな内容があったので、この場で触れてみる。
その内容というのが、
米ぬか嫌気ボカシ肥のリン酸の挙動だ。
米ぬかのリン酸といえば真っ先に思い付くのが、
フィチン酸だ。
フィチン酸は
イノシトールという環状のアルコールのヒドロキシ基(-OH)の箇所が全てオルトリン酸(H2PO3-)に置き換わった構造をしている。
これが米ぬか嫌気ボカシ肥の熟成中にどのように変化していくのか?
米ぬか嫌気ボカシ肥の発酵に関与する微生物の中でフィチン酸を利用できる菌、もしくは細菌はいるか?だけれども、酵母とフィターゼ(フィチン酸を利用する時の酵素)で検索するといろいろと出てくるので、ボカシ肥中にフィチン酸を利用出来る菌はいると判断して良いだろう。
フィターゼが働くと、フィチン酸からオルトリン酸の形で分離され、これは核酸やリン脂質の材料となるだろう。
フィターゼが働くと、リン酸が外れイノシトールが残る。
このイノシトールはどうなってしまうのだろうか?
有用希少イノシトールの微生物生産 新たなイノシトール代謝経路の発見とその応用 - 化学と生物 Vol. 50, No. 10, 2012に拠ると環構造の開裂後にいくつかの反応を経て、最終的に解糖系あるいはTCA回路(クエン酸回路)へ流入すると記載されていたので、ブドウ糖と似たような反応と見て良いだろう。
核酸は作物の根の発根促進に繋がるので、改めて米ぬか嫌気ボカシ肥の良さを実感した。