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稲作をされている方から定期的に土壌分析をしているので、その結果を見てコメントが欲しいという連絡があった。


その方の分析結果は


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のような感じ。

このような結果が5圃場分ある。


この結果で最初に何を見るべきだろうか?




真っ先に目に付いたのが、pHの低さだった。

2024年10月の方のpHは5.1で、2025年3月の方のpHは5.3だった。


この方は比較的近い日付で土壌分析を行っているのは、稲作向けの土壌改良を行っているからで、その結果を数値で確認したいからだそうだ。




稲作において、pHが5.5よりも下になるのはよろしくないとされる。

であれば、pHが5.1→5.3になっているので、改善の結果は見られ始めている。


興味深い事に他の4圃場でも同様の傾向が見られた。


pHが5.5を下回るとなぜ良くないのか?というと、おそらくだけれども、鉄の溶脱が早くなり、秋落ちが発生しやすくなるからだろう。

土壌のpHを侮るなかれ

新しく借りた水田が老朽化水田だった時は


では、田においてpHを低くしない要素は一体何なのだろう?




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真っ先に思い付くのが、く溶性の石灰(炭酸石灰)だ。

ただ、冒頭の結果では見えにくいが、石灰の量は減っている。


田の土壌のpHでもっと大事なものがあって、それが、


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写真:緑泥石を中心にして


モンモリロナイト等の2:1型粘土鉱物だったりする。


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※左:1:1型粘土鉱物、右:2:1型粘土鉱物


2:1型粘土鉱物はSiO四面体-Al八面体-SiO四面体の層状になっているが、これが風化するとSiO四面体の箇所が溶脱し、

SiO44- + 4H+ → H4SiO4

※上記の反応の正確性については自信がない

のような反応があり、H+の数が減り、pHが上がる。


というわけで、田で2:1型粘土鉱物の量が少ない時にpHが下がる傾向がある。




2:1型粘土鉱物を肥料としての効果として、高い保肥力(CEC)がある。

今回相談された方は土作りとして2:1型粘土鉱物を施肥していて、その効果を目視したいということで、短い期間で分析を行っていた。


5圃場すべてで見られたもう一つの特徴として、CECの向上が見られた。

※例:CEC 10.5→11.5


これは2:1型粘土鉱物の施肥に因るものと見て良さそうだ。

※2:1型粘土鉱物が土壌中の植物性の有機物の分解を遅め、有機物由来のCECも加算される

レンゲ米の質を向上させることはできるか?




これらの内容を踏まえると、田の土の劣化は2:1型粘土鉱物の消耗だと捉える事が出来る。

2:1型粘土鉱物はイネのケイ酸の供給という要素も有るため、強い株にならず、猛暑日等の環境ストレスに対しても弱体化する恐れがある。

イネがシリカを吸収すると


年々猛暑日が増えている昨今、田のpHが低くなっているところは要注意だな。


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