イネは肥料の窒素分をどう利用するか?の続きだけれども、一旦稲作から離れて、野菜全般の話に移る。


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この写真のミズナは牛糞を主として施肥を行っていたところのミズナで、秀品率が激減していた。

ここの秀品率を改善するために施肥設計から牛糞を外し、植物性の有機物(剪定枝やコーヒー粕が主体)を主にしたところ、


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秀品率は3倍近くに向上した。

農薬の使用量を大幅に削減、もしくは無使用になり、肥料代 + 農薬代のトータルコストが削減され、利益率が向上する


撮影時の天候等で明確な写真というわけではないけれども、顕著にわかることとして、秀品率が高くなったところでは葉の色が薄くなっている。

生長が揃ったり、病気になりにくくなったので、欠株が少なく一斉に収穫できるようになったことで秀品率が格段に高くなった。


ここで注目すべきは家畜糞にはすぐに利用できる硝酸態窒素と呼ばれる窒素成分が豊富に含まれているということだ。

測定はしていないけれども、一般的に葉の色が濃い野菜の硝酸態窒素の濃度は高いと言われている。


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根から吸い上げた硝酸イオンは各細胞の液胞(図の左側の水色の箇所)に蓄積されているのだろう。

個人的には液胞に高濃度で蓄積された硝酸イオンが葉の光の反射に影響を与えているのではないだろうか?と予想している。




前回のアンモニウム同様、液胞に蓄積された硝酸イオンはどのように利用されるのか?を見ていく。


硝酸イオン(NO3-)は硝酸還元酵素(補酵素はNADPH等)によって、

NO3- + NAD(P)H + H+ → NO2- + NAD(P) + H2O

亜硝酸イオン(NO2-)へと還元される。


続いて、補酵素を還元型フィレドキシン(Fdred)とする還元酵素によって、

NO2- + 6Fdred + 8H+ → NH4+ + 6Fdox + 2H2O

亜硝酸イオンがアンモニウムイオンに変わる。

※Fdoxは酸化型フィレドキシン


後は前回の内容と同様の反応でアンモニウムイオンをアミノ基に変えて、有機酸に付与することでグルタミン酸等のアミノ酸になる。

羊土社 基礎から学ぶ植物代謝生化学の25〜26ページを参考にして記載

イネは肥料の窒素分をどう利用するか?


ここで二点程見ておきたい箇所があって、1つはフィレドキシンで、もう一つは硝酸イオンの還元について。




フィレドキシンは内部に鉄-硫黄クラスターを含む鉄硫黄タンパク質の一つであり、電子伝達体として機能する。

フィレドキシン - Wikipedia


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このフィレドキシンは光合成の時に見た。

光合成の明反応-後編-


硝酸イオンを利用する時は還元(高エネルギー)状態にしておくことが必要で有ることになり、硝酸イオンからアミノ酸を経て、ヘム(葉緑素等)やタンパクといった窒素化合物に変化する時、硝酸イオン→アンモニウムイオンの過程が律速段階となる。

※律速段階は全体の反応を見た時に最も遅い箇所でボトルネックのようになる箇所を指す。律速段階の箇所で全反応の速度が決まる

反応速度#律速段階 - Wikipedia




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植物は根において、貪欲に硝酸態窒素を吸い上げるが、植物体内では硝酸イオンをすぐに利用することができない。

それ故、土壌に硝酸態窒素が豊富にある場合は、体内での硝酸イオンの使用よりも蓄積の方が優位になり、液胞に硝酸イオンが溜まり続ける。


ホウレンソウの話になるが、施肥窒素量が多いと葉のビタミンCが減る傾向にあるそうだ。

環境にやさしく美味しい農産物 ホウレンソウ - 一般財団法人日本土壌協会 8ページより引用


硝酸イオンの還元で電子を多く使うから、ビタミンCの方に電子を回せないのだろう。

ビタミンCは光合成を効率的に行う為の要素であったため、葉の色が濃くなっている株では光合成の質は期待できない。

遥か昔に植物が上陸にあたって獲得した過剰な受光対策

植物ではビタミンCの合成はどのように行われるか?


土壌に硝酸態窒素がある場合は発根量が減るので、貪欲に吸収する窒素は体内で相対的に増え、それ以外の成分は相対的に吸収量が減り、葉内の硝酸イオン濃度は高まり続ける。

植物ホルモンから再び牛糞堆肥による土作りの価値を問う


硝酸イオンが液胞を占拠し続けてしまうので、遮光に関する色素やその他抵抗性を示す二次代謝産物の濃度が必然的に下がり、病気に罹りやすい株になるのは安易に想像できる。

いもち病の抵抗性を色素の観点から見てみる

植物の高温耐性とイソチオシアネート


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