前回、ネギ栽培で厄介なべと病に触れた。
べと病はフハイカビという卵菌類由来の病気であることを記載した。
べと病でいろいろと読んでいたら、
べと病対策で頻繁に使用されているとある農薬の作用点が目に付いた。
有効成分がアゾキシストロビンという農薬だ。
食用キノコ(シメジ)から発見されたストロビルリンと同様の作用がある。
ストロビルリンの作用点はミトコンドリア内の複合体Ⅲを阻害して、
生物の電池であるATPの合成を阻害して死滅させる。
複合体Ⅲでの作用をざっくりとした図で書くと、
プロトン(H+)と(この図には記載していないが)電子を移動させる個所を阻害している。
ストロビルリン系殺菌剤の作用機構 - 日本農薬学会誌24,189-196(1999)
この成分の注意点として、
上記のATPの合成阻害で菌の活動停止を誘導させるわけだけれども、
ATP合成時に関与した酵素を潰しても、
代替の酵素があるため完全に活動停止まで追い込むことができないとされる。
上でリンクを張った論文内で、
ストロビルリン系の農薬で処置した時の活性酸素の動きが記載されていて、
宿主の植物が感染した菌に対してフラボノイド※で活性酸素の除去の阻害をしているという作用があった。
※フラボノイドはポリフェノールとして扱われているのでアントシアニンのようなもの
となると、
今回紹介したストロビルリン系の農薬を殺菌剤という位置づけで使用している方が多いけれども、
おそらくこの意識での使用は効果がないはず。
増殖を遅くするだけで劇的な殺菌作用は見込めない。
植物の持つ防御反応によって更に追い込む。
という二つの重要な要素があることを意識した上で、
ポリフェノール合成をサポートしつつ、
植物体内でのみ活性酸素を除去するグルタチオンのようなものを合わせて使用することで効果を発揮するのだろう。
追記
今回の農薬はミトコンドリアなので、真核生物(ユーカリア)の話になり、バクテリアやアーキアは対象外となる。