前回の光合成速度の高い植物はどこにいる?の記事で、C4型光合成回路(以下、C4回路と略す)を持つ植物らの光合成量が抜群に高いという内容を記載した。
先日からの光合成による大気中のCO2を固定する量を増やしたいという流れにおいてC4回路は外せないので、今回の記事で改めてみることにした。
以前、夏に活躍!C4回路の植物たちという記事で、C4植物はC3植物が行うような光合成を行いつつ、吸収した二酸化炭素の一部を有機酸の形にして貯蔵するという内容を記載した。
今回の話に入る前に簡単に光合成を見ておくと、
6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O
という二酸化炭素と水を葉が太陽から得たエネルギーを使って、ブドウ糖(上の式ではC6H12O6)を合成する。
この光合成の反応において、ボトルネックになる個所が太陽光の強さや吸水量だと思われがちだが、実は二酸化炭素の吸収にも上限があり、
太陽光や水はふんだんにあるけれども、その量に対して二酸化炭素の吸収量が少ないということがある。
C4回路は上記の問題を解決する。
※光合成のエネルギー変換と物質変換 - 株式会社 化学同人 209ページより
上の図はトウモロコシのC4回路の方の説明になる。
葉の気功から吸収した二酸化炭素を光合成時に出来たNADPHから電子を受け取り、リンゴ酸という形で二酸化炭素を固定する。
これをCO2濃縮と呼ぶ。
※ブログ記事のタイトルはCO2の2に<sup>タグが使用できないので、二酸化炭素という表記にした
リンゴ酸は必要に応じて、二酸化炭素とピルビン酸に分解され、ここでできた二酸化炭素は光合成の暗反応に使用される。
二酸化炭素という気体を有機酸という個体に変えることで、葉の葉肉細胞内で糖合成の材料を貯蔵できるようになったのだ。
この反応で注目したい個所が二点あって、今回はそのうちの一つに触れる。
気功から吸収された二酸化炭素が葉肉細胞内で水と合わさって炭酸水素イオン(HCO3-)になっている個所がある。
※上の図の一番左側
この反応に炭酸脱水酵素(Carbonic anhydrase、略号:CA)という亜鉛(Zn)を含む金属酵素が関与している。
この酵素は二酸化炭素と水から炭酸を合成するスピードを速めることが出来る。
※上記反応は自然環境下でも普通に起こる
実際の反応は、
Zn2+ + H2O ⇆ H+ + Zn2+-OH-
Zn2+-OH- + CO2 ⇆ Zn2+-HCO3- ⇆ Zn2+ + HCO3-
となり、
水から水酸化物イオンを得て、水酸化物イオンを二酸化炭素に加えることで炭酸水素イオンを生み出す。
おそらく炭酸脱水酵素はC4回路以外でも重要な役割を担っている可能性が高い。
となると、
※写真はソルガム(ソルゴー:モロコシ)ではなく、トウモロコシかもしれない
緑肥としてC4のソルガムを播種した場合、亜鉛(Zn)という微量要素も重要な要因になる可能性が高い。
この話を踏まえて、畑作を続けることは難しい-前編に続く
関連記事