トマトの栄養価から施肥を考えるの続き。
前回の記事でトマトの果実の成分を整理し、その中のグルタミン酸について注目した。
グルタミン酸の他に不飽和脂肪酸のリノール酸があったけれども、今回は脂肪酸について見てみる事にする。
果実ではなく株全体で脂肪酸はどのように使われているのだろうか?
すぐに思いつくものがリン脂質の細胞膜で、おそらくこれは一旦細胞ができてしまったら、果実には転流しないだろうから膜の脂質は見ないことにする。
ということで、細胞内に遊離している脂肪酸について調べてみることにした。
早速検索をしてみたら、作物の高温耐性を高める揮発性バイオスティミュラント「すずみどり」の開発 みどりの香りを用いた新しい農業技術 - 化学と生物 Vol. 58, No. 4, 2020という読み物に辿り着いた。
要約すると、
en:User:Edgar181 - en:Image:ALAnumbering.png, re-drawn in BKchem+perl+inkscape+vim, パブリック・ドメイン, リンクによる
葉緑体内に不飽和脂肪酸(リノレン酸)があって、高温等の環境ストレスを受けるとストレスによって生成された活性酸素によって酸化されて、
Edgar181 - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる
ヘキサナールというアルデヒドになる。
※他にもヘキサノールというアルコールもある
これらは以前、香り化合物の合成経路から見えてくることまでの記事で見てきたもの香り化合物(みどりの香り)であるが、この時は食害昆虫や病原性微生物への耐性で触れた。
この香り化合物を調達して、ハウスに吊り下げて揮発したものをトマトに当たるようにしたところ、高温ストレスが緩和され、花落ちも減ったそうだ。
トマトの花落ちを器官離脱と捉えれば見えてくるものがあるかもしれない
読み物の中では、ストレスの緩和の具体的な内容の記載はなかったため、これからの研究で明らかにされていくのだろう。
冒頭の話題に戻って、果実内の不飽和脂肪酸の含有量を高めるとするならば、高温ストレスに対しての脂肪酸の備蓄をさせておいて、備蓄分を酸化させずに果実に転流させてしまえば、トマトの果実の品質が高まる事になる。
高温ストレス用に備蓄した脂肪酸が果実に転流するかは不明だけれども、転流するならば、程よい高温で栽培しつつ、高温ストレスに当てない、もしくは速やかに緩和できれば、トマトは美味しくなるはずだ。
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