前回、オリジナルのプラスミドをアグロバクテリウムに持たせ、アグロバクテリウムはそのプラスミドを植物の渡すことによって、宿主の植物の細胞の一部で遺伝子組み換えが行われることに記載した。
この方法だけど、あくまで一箇所なので、その細胞を切り抜き、培地で細胞を培養して、クローン植物みたいな感じで一個体になるまで育て上げなければならない。
クローンの培養って手の器用さと根気が必要なんだよね…
そこで、下記の様な方法がとられる。
植物学ではナズナが研究で利用されることが多いので、ナズナをベースにして記載すると
(写真 : ナズナ(アブラナ科・ナズナ属)1年草 - なごみのとき より引用)
花の咲く前の蕾に
アグロバクテリウムを感染させる。
これで後々雄しべになる細胞と雌しべになる細胞の遺伝子組み換えを行うことが出来た。
この蕾はそのうち開花し、雄しべから遺伝子組み換えされた花粉が雌しべに触れて受粉する。
遺伝子組み換えされた花粉と雌しべの奥にある卵細胞が受精して種ができる。
※さやの中に種がある
この種は理論上、遺伝子組み換えされてるわけだから、そのまま土にまくだけで遺伝子組み換え株が得られたことになる。
この方法をフローラルディップ法(またはフローラルスプレー法)と呼び、従来の面倒な培養という過程を省くことができる。
※今回は端折ったが、試験官培養したアグロバクテリウム液に蕾を浸す(ディップ)か、霧吹き(スプレー)で感染させる
ここまで書いて伝えたかったことは、遺伝子組み換えは微生物の特徴をフル活用して行い、みなさんがイメージするような精密なメスで何かをするという作業ではないということ
それと、植物以外の遺伝子が植物内に入り込むことは当たり前だということ。
近い将来というかむしろ今、遺伝子組み換え作物が医学的な面で重要な鍵になっていくだろうから、遺伝子組み換え作物を反対している方には最低限としてアグロバクテリウム法は説明できる様になっていてほしいものです。