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小さな池の真ん中で


前回の記事でおそらくヒエの仲間と思われる草が、水位の低い池で生育していた内容を記載した。

水位の低い湿地で生育できたとしても、草である以上、根も呼吸するわけで、根でも酸素を要求する。


湿地で生育する有名な作物としてイネがあるけれども


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背丈が整っていることのすごさと違和感


イネの根ももちろんのこと、根は酸素を要求する。


これらの湿地に強い植物は、葉や茎から吸収した酸素を通気組織を介して根に酸素を送る機能が発達しているとされている。

ふとこの酸素を送る機能が現在どこまで解明されているのか?気になったので、イネの酸素運搬について検索してみることにした。


そこで引っかかった総説が下記になる。

ROL バリア:湿生植物の過湿状態の土壌への適応を支えるしくみ - 根の研究(Root Research)25 (3):47-62 (2016)


ROLは放射状酸素放出(Radial oxygen loss)の略で、植物が茎葉で獲得した酸素を根に運ぶ際に酸素が植物体内の外に漏れる現象のことを指す。

イネ等の湿地に強い作物は酸素放出量が少なく、根の先端まで酸素を行き渡らせる機能が発達している。


文章で見るよりも図で見るとわかりやすいので、


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図:ROL バリア:湿生植物の過湿状態の土壌への適応を支えるしくみ - 根の研究(Root Research)25 (3)の51ページより引用


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植物がこのような湿地環境になった場合に湿性植物では根の上部をROLバリア(おそらくスベリンという物質)で囲って酸素の漏れを減らすとされている。

一方、湿地に弱い植物ではROLバリアが形成されないので酸素が根の上部で漏れて、下部の成長が盛んなところまで酸素が行き渡らない。




土壌が常に水を張った還元状態になると、土壌中の微量金属が還元状態になる。

例えば鉄は鉄(Ⅲ)から鉄(Ⅱ)になって反応性が高く毒性のあるものになる。

※鉄(Ⅱ)は二価鉄として呼ばれることが多い。

重要だけど扱いにくいものでもある二価鉄


少量であれば良薬、多量であれば毒薬であるような還元された金属に対して、ROLバリアは根の大事なところに触れないように守る役割をし、ROLバリアによって土の深いところまで酸素を運搬することによって、土の深いところの還元された金属を酸化して無毒化することもできる。


無毒化について書くべき内容があるのだけれども、わかりやすい写真がないのでまた別の機会で記載する。




ROLバリアの総説を見て、非湿性植物では酸素が根の上部で漏れるということが水没に弱いということがわかった。

酸素が根の上部で漏れるというのは、別に水没していなくても日常的に発生している現象ではないだろうか?


日常的に酸素が漏れるという現象があれば、今まで気になっていた現象の一つがクリアになる。


今回は長くなったので、気になっていた現象のことは次回記載することにしよう。


-続く-