前回の物理性の向上 + レンゲ栽培 + 中干しなしの稲作の新たに生じた課題の記事に関して、整理しておきたい内容がある。



稲作の中干しで時々見聞きする中干しで水を切ることによってイネは水を求めて発根し、後の登熟時に株全体を支えるようになるという内容だ。

田に水を張リ続けると常に水がある状態になり、根は常に水を吸収できて発根を怠けるという人目線で説明されているのが気になっている。


上記の話があるということは似たような現象が観測されたからなのだろうけれども、保水性を高めた土壌において発根量が多い傾向にあることと一致しなくなるので、丁寧に見ておいた方が良い。


はじめに発根促進の植物ホルモンに触れておくと、イネで重要になるので不定根の形成であるので、オーキシンの合成が重要になると同時にオーキシンの働きを相殺するサイトカイニンの合成も注目しておく必要がある。

イネの秀品率を高める為に不定根に着目する


オーキシンの方は一律活性していることにしておいて、サイトカイニンの方を見ていく。

発根の大事な時期にサイトカイニンの合成量が少なければ、発根を阻害する要素が減り、田に水を張った状態であっても不定根の伸長は行われるはずだ。


以前、植物ホルモンから再び牛糞堆肥による土作りの価値を問うの記事で、植物の根の周りで無機栄養塩(特に窒素)が多いと発根が抑制されるという内容を記載した。


中干しをしないという選択をすると、有機物が土壌の微生物に常に分解(有機を無機化)する条件になる他に、



中干ししていない田にはたくさんの生き物が集まるらしいの記事で触れたように生物性が向上し、田に集まったたくさんの生き物によって粗大な有機物が食べられ、細かくなったものが排出され、それが直ちに無機化される。


中干しをしないという選択をすると、田の有機物の無機化が促進され、イネのサイトカイニンの合成量の増加に直結することになる。




上記の内容から物理性の向上 + レンゲ栽培 + 中干しなしの稲作において、見直すべき箇所は


一発肥料の2つの型


一発肥料の構成であるはず。

初期生育に必要な分のみ無機で与え、中干し付近の時期ではBB系の無機は一切効かせず、有機質の要素でのみ肥料を効かせる。


上記の構成にするだけで、出穂期になるまでサイトカイニンの合成が抑えられ、光合成産物は極力発根の方に回せるようになるはずだ。




今回の話ではオーキシンの活性には触れていないけれども、乾燥ストレスによって活性型のオーキシンが増えるというようなことがあれば、中干しという工程を外す事ができなくなる。


しかし、他作物において保水性を高めた畑で発根量が多くなるのを数多く見ていると、稲作で乾燥ストレスでオーキシンの活性が増すということは考えにくい。


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