畜産の糞詰り問題から栽培側への影響までの記事で畜産で発生する家畜糞は処理が大変で、処理にはお金がかかるし、保管するにもお金がかかる上、保管自体がそもそも大変で、家畜糞を溜める、もしくは処理するだけで畜産にとっての負担となる。
家畜糞は堆肥化することが推奨されているが、土壌のアルミニウムが腐植を守るまでの記事と、もう、牛糞で土作りなんて止めようよの記事で、家畜糞堆肥には土作りの効果が高くないどころか障害が発生しやすい上、土壌に蓄積される有機物モデルから見ても家畜糞堆肥は効率的ではない。
となると、畜産にとって家畜糞堆肥は負担になるだけであって、他の箇所に価値を見いだせないのか?
といえばそうでもない。
というわけで、家畜糞堆肥の有効利用を考えてみよう。
産卵鶏の鶏糞堆肥を例にして成分を挙げてみると、
・硝酸塩(飼料のタンパクを分解して硝化したもの)
・腐植(トウモロコシ等の植物性の飼料由来の排泄物)
・炭酸塩(飼料の一つである炭酸カルシウム等の未消化分)
・リン酸塩(飼料の一つであるリン酸カルシウム等の未消化分)
・有機態リン酸(穀物飼料内の貯蔵性リン酸)
・その他各種成分
で構成されている。
腐植があるから土作りの効果があるのでは?と感じた方は下記の記事をご覧ください。
熟成した家畜糞堆肥の主な成分は硝酸塩、つまりは何らかのミネラルと結合した硝酸態窒素で、カリウムと結合して硝石であることが多いらしい。
カリウムと農薬を使用している方の野菜も美味しいよで品質を上げるために大事な要素で、
大型の果菜類では顕著に品質に関わる。
炭酸塩といえば炭酸石灰(カルシウム)。
炭酸石灰といえば、く溶性の生理的塩基性肥料で、土に緩衝性を与える。
これだけ見ると、やっぱり家畜糞堆肥(今回は鶏糞)は土作りに有効ではないのか?と思えてくるけど、家畜糞堆肥には罠があって、知らず知らずの内に土壌に硝酸態窒素を溜め込んでしまったり、石灰を使っているという意識がないまま施肥してしまう。
更に穀物飼料由来のリン酸がなかなか厄介で、この有機態リン酸を溜め込むと、様々な肥料の効きが悪くなる。
家畜糞堆肥を大量に使用しつつ、これらの欠点を回避する手段として、
イネ科の緑肥を栽培の間にかますというもの。
イネ科は土壌の有機物蓄積モデルで重要なプラント・オパールを大量に持ち、硝酸態窒素に対して貪欲に吸収して成長する。
緑肥であれば、株間を狭くすることが出来、土に中にたくさんの根を生やすことが出来、ついつい溜まりやすいく溶性石灰を消費する。
※有機態リン酸も同様
緑肥の生育中に緑肥の葉に欠乏症が見られたら、次作で何の肥料を施肥すれば良いかアタリをつけることができる。
だけど、
緑肥を栽培するための畑を確保することができないよ。
といういう意見がよく挙がる。
ということでこれから栽培を始める耕作放棄地に家畜糞堆肥を投入して緑肥で準備という手がある。
栽培に関する経費は下がりつつ、秀品率は確実に上がる。
研修生を受け入れている農家で、研修生が独立する時に暖簾分けのように畑を渡す習慣ができれば、耕作放棄地を減らしつつ家畜糞の処理の効率は上がって、しかも独立時の利益率もある程度保証できるようになる。
ちなみに
この写真を撮影したところでは、1トン/反の熟成鶏糞堆肥を入れてエンバクをかました後、
無肥料、無農薬でカボチャを栽培して、
カボチャの秀品率を落とすことなく栽培することが出来ました。
カボチャ自身が強いのであまり参考にならないのはわかっているけど、それでも参考まで
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