乳酸菌の摂取は免疫グロブリンAの産生を活発にするの続きで、世間で言われる免疫向上に対して疑問点があるので、その前に用語の整理をするかと、図でも描こうかと重い腰を上げ、愛用しているイラストACさんのサイトを開いたら、
まさにこれだよというイラストがあって、イラストAC様ありがとうございます。と思っていたところで、今回の話を始める事にする。
これからの内容は発酵食品の健康効果の探求の為の下準備のようなものです。
免疫について知りたい方には向いていないので、詳しく知りたい方は免疫学の専門書を読まれることをお勧めします。
体内に病原性を示す細菌やウィルスが侵入してきた時、自然免疫が働きつつ、攻撃して失活した細菌等の断片(抗原と呼ぶ)を獲得免疫の方のリンパ球に渡す。
主に細菌向けには体液性免疫(好中球)のB細胞が働き、ウィルス向けには細胞性免疫のT細胞(感染細胞のアポトーシスを誘発)が働く。
B細胞は抗体を作り、細菌に抗体が付着すると好中球の働きが洗礼される。
ウィルスも血液を移動するものであれば、中和反応という形でウィルスの感染能をなくして無害にすることができる。
獲得免疫の面白いところが、自然免疫で侵入者を攻撃して得た情報(抗原)を元に獲得免疫を教育して、特定の細菌やウィルスに対して最も効率的に作用する抗体をすぐに合成出来るように記憶B細胞というものを残しておく。
※有事の時は記憶B細胞を増殖させるだけで、確実に作用する抗体のみを大量に得ることができる
※細胞性免疫の方では記憶T細胞を残す
所謂、世間一般で言われる感染後に免疫が出来たというのは、これらの記憶B細胞や記憶T細胞を指す。
抗原というのは特定の細菌なりウィルスに効くような形をしていて、他の病原性の細菌なりウィルスには効かないとされる。
例えば、インフルエンザのウィルスの抗体を得ても、コロナのウィルスには作用しないといったこと。
前回の乳酸菌の摂取は免疫グロブリンAの産生を活発にするの記事で人体において乳酸菌を摂取して、腸で自然免疫の樹状細胞が乳酸菌を認識すると、獲得免疫の方が働き、
唾液中で抗体が2つ繋がったIgAの産生量が増えたという研究報告があった。
これは素晴らしい発見なのだけれども、おそらくこの発見から乳酸菌の摂取、つまりは乳酸発酵をさせた発酵食品の摂取によって、免疫が向上したという流れになり、食の専門家たちが表面だけすくい上げ、発酵食品の摂取が言っていないだろうか?
ここからが疑問で、抗体は特定の細菌やウィルスに合わせて合成される。今回の話では乳酸菌を認識してIgAが産生される。この時に強化された抗体はインフルエンザ等の症状に対しても有効なのだろうか?
乳酸菌であれば、今まで溜め込んできた記憶B細胞を片っ端から活性化させるという作用があれば、有効かもしれないけれども、そのような報告ではなかった。
仮に片っ端から記憶B細胞を活性化させたとしても、新型のウィルスに対しては有効ではない。
発酵食品の摂取が抗体の産生を活発にする。だから体に良いという意見を挙げるのは時期早々ではないだろうか?
補足
今回の記事は発酵食品が有効ではないと言っているわけではなく、視点がずれているのでは?といった個人的な見解です。視点がずれていると思わぬ所で足を引っ張られることがあるので、その整理がしたかった。
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