今年最も印象に残った出来事といえば、なんと言っても和歌山県海南市の下津にある六本樹の丘に関することだろう。
六本樹の丘というのは、お菓子の神様こと田道間守(たじまもり)命が垂仁天皇の命を受け、常世国(とこよのくに)にあるという不老長寿の非時香菓(ときじくのかくのこのみ)の木を持ち帰り植えた場所だと言われている。
常世国は海のかなたにあるとされた異郷で永遠不変の国を指し、非時香菓はカンキツのヤマトタチバナを指す。
田道間守命は大和国に戻った時に常世国に似た場所を探し、ヤマトタチバナの木を植えたそうだ。
※ヤマトタチバナから様々な素晴らしいカンキツの品種が誕生する。
今回の話を進める前に、背景となる記事があるので次の行にリンクを記載しておく。
何故、六本樹の丘が今年最も印象に残った出来事であったか?というのは、春頃に知人(ファームプロさん)の誘いで沖縄の山原(ヤンバル)に行くことになったことから始まる。
株式会社ファームプロ – 消費者と農業者とが関わり合う社会を目指し、 「農」の価値向上のために様々なサービスを開発していきます
沖縄行きの目的はカンキツとは全然関係なくて、
沖縄でチョコレートの原料のカカオの栽培に挑戦している方のところに行こうというものだった。
沖縄でカカオの栽培は沖縄でも気温が低いらしく、気温を上げるための方法の開発が急務であった。
そこで地温にも意識をしてみたらどうだと地温上昇をする為の鉱物資源はないか?と探していたら、
緑色片岩(緑色千枚岩)が地域を象徴する石として扱われていて、土木工事等で緑色片岩(破砕されたものも含む)がたくさん出てくることを知った。
破砕された緑色片岩があれば、土壌に有機物を定着させる能力が向上する為、地域の産廃のバガスと組み合わせれば地温の上昇を行う事ができるのではないか?という話題になった。
沖縄に行ってから二ヶ月程して、沖縄に誘ってくださった知人から、和歌山県の下津というところで見事な草生栽培をしているミカン農家がいるから一緒に行きませんか?という誘いがあった。
その方の園地に行ってみたら、
足元に緑色片岩が大量に転がっていた。
更に園地から海の方を見てみたら、
ヤンバルで見た景色と何か似ていた。
下津にはヤマトタチバナの伝説があったので、帰宅後にヤマトタチバナについて調べてみたら、
ヤマトタチバナとヤンバルのシークヮーサーはDNAレベルで近縁であるという研究報告にたどり着いた。
田道間守命が非時香菓を探す旅で向かったのがヤンバルで、大和国に戻った時にヤンバルに似た景色を探す時に目印にしたのが緑色片岩ではないか?
この内容が頭に浮かんだ時、田道間守命の冒険譚に対してワクワク感が止まらなくなり、大和国と下津について学ぶことにした。
大和国の話はとりあえずここまでにしておいて、カンキツの話に戻す。
カンキツの話題で真っ先に頭に浮かぶのが、四国の愛媛県の伊予柑だろう。
ここにもヤマトタチバナのようなドラマはあるのか?と気になったので調べてみたら、
愛媛のカンキツの収量のトップは八幡浜という地域であることがわかった。
何とこの八幡浜も緑色片岩を母岩とする地域であるらしい。
知人とカンキツと緑色片岩の話題で盛り上がっていたら、ハウスミカンを栽培している方から興味深い連絡が届いた。
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昔から和歌山では青い石が出る園地は良いみかんが出来ると伝えられているそうです。
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ここでいう青い石は緑色片岩を指すらしい。
田道間守命がタチバナの木を植える場所を選んだ理由の一つに緑色片岩があったとするならば、その言い伝えは1900年の時を経て、今でもカンキツの栽培者の大切な指針として残っていることに感動した。
カンキツには壮大なドラマがあった。
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