硝酸イオンの人体への影響を知りたいの続きまでの記事で、人が硝酸イオン(実際には硝酸か硝酸塩の形)を摂取した場合、体内でどのような反応があるのか?を見てきた。
※硝酸イオンは人体内で合成されるため、摂取したものがどれ程の影響を与えるのか?は不明
次に作物に硝酸(硝酸態窒素と呼ばれる)を過剰に与えた時の影響に触れる。
家畜糞を熟成させればさせる程、硝酸態窒素の濃度が増えると言われている。
これはタンパクを分解した時の最終産物が硝酸といういうことであって、家畜糞も有機質肥料の一種なので、当然ながらタンパクから硝酸までの間の物質も残っている。
家畜糞で土作りをしている土壌で顕著に見られるのが、
葉色が濃く、葉の先が焼けている事が多い。
※比較用の写真がある記事→葉の色が濃くなるとどうなるのか?
写真で用いる作物は異なるが、
家畜糞の土作りで顕著に現れるのが、発根量が少ないということがある。
家畜糞で土作りをすると、EC(水溶性の肥料成分の濃度の指標:主に硝酸塩の濃度)が振り切ってしまう。
土壌の浸透圧の上昇と過剰な硝酸態窒素が作物の根に悪影響を与えていることは間違いない。
話を単純化する為に、家畜糞の成分を硝酸塩としよう。
家畜糞を主にして土作りを行っていた土壌では、上の写真のように土表面にヒビが生えやすくなっている。
これは土の中に空気が入りやすいのでは?と錯覚してしまうが、ヒビが生えていないところでは有機物の少なさで土が締まっており、気相が少なくほとんど空気が入り込めない状態となっている。
ヒビ割れの箇所は土を引き裂く強い力が発生しているので、周辺の作物の根はヒビ割れ時に引き裂かれているだろう。
※余談だけれども、稲作の中干しにも同様の問題がある。
土が固くて作物が発根できない。
ヒビ割れ時の引き裂く力で作物の根が傷付き伸長できない。
作物の根の先端では、微量要素を含む金属系の肥料成分の吸収が行われ、窒素系は根の至るところで吸収するという傾向がある。
上記の症状で根の先端が少なくなるので、加里(K)、苦土(Mg)、石灰(Ca)と各種微量要素の吸収量が減り、相対的に硝酸態窒素の吸収量が増える事になる。
作物の葉の硝酸イオン濃度も必然的に高くなる。
これらの内容を踏まえた上で、土壌の硝酸態窒素濃度が高い時の事を考えてみる。
土表面がヒビ割れしやすい環境では、土壌中の酸素が少なく、嫌気性の細菌が活発になりやすい。
嫌気性の細菌が活発になると、
上の図のような反応が起こりやすくなる。
反応性が高いアンモニアや亜硝酸が生じやすく、これらが作物の根に悪影響を与えるとされる。
ガス障害の発生と対応 - 岡山県に詳しく記載されているが、上記の物質がよく言われる未熟堆肥のガス障害の原因であり、締まった土に家畜糞を大量に入れても発生する。
家畜糞による土作りは化学性の面で発根量を減らす要因となり、更に葉の硝酸イオン濃度が相対的に高まることになる。
※深刻な亜鉛欠乏に陥りやすい
家畜糞で土作りをした土壌から収穫出来た作物(特に軟弱葉物)は栄養価が低く、硝酸イオン濃度が高い傾向になりやすいことは確か。
野菜から摂取した硝酸イオンが人体に影響を与えるか?は不明とされるが、硝酸イオンから発生した活性酸素を鎮静する為のミネラルが少ないので、
葉色の濃い野菜を食べても、期待する程の健康効果は得られないだろうし、不健康になる可能性も秘めている。
高濃度の硝酸イオンを含む野菜を摂取しても、葉のビタミンCが相殺するという意見をどこかで見かけたが、酸化力のある硝酸イオンを多く含んでいる時点でビタミンCも期待できないのでは?
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