林縁の風媒花の木々までの記事で見てきた林の縁にあるブナ科の落葉樹と常緑樹で、どちらも開花を終え、常緑樹の方では葉が大体出揃ったところだろうか。
常緑樹の方の色が黄色っぽいので、常緑樹の葉は展開を続けている。
以前、常緑樹はおそらくアベマキで、常緑樹はおそらくアラカシだと記載した。
アベマキと言えば、大きなドングリを実らせる事を連想して、
アラカシといえば、ドングリのイラストで定番の形をしている。
※これらの写真では分かりにくいが、ドングリの大きさは アベマキ >>> アベマキぐらいの差がある。
以前、ブナ科の木の種子と果実の大きさが意味するものの記事で記載したが、ドングリは大きい程乾燥に強い傾向があるらしい。
森林は外側に向かう程乾燥が強くなるので、大きなドングリは森林の外側に広がる特徴を表しているといっても過言ではないはず。
ここで一つブナ科の木の開花から結実までの視点を加えてみる。
大きなドングリのアベマキやクヌギは開花から結実まで二年を要するらしいが、
シラカシやアラカシは開花から結実まで一年であるらしい。
結実の視点を加えた上で改めて、
この写真を俯瞰してみると、全体を覆っている落葉樹のアベマキはゆっくりと時間をかけて、森林の外側へ広がろうとしている中、落葉樹に覆われている常緑樹のカシはなるべく速く自身の根元で子孫を増やそうとしている。
アベマキの根元にカシが占拠してしまうと、その後にアベマキのドングリが落下しても光量の問題でアベマキは成長できなくなってしまうだろう。
カシによってアベマキが外側に広がらなければならないという選択圧をかけ、より乾燥に強くなる為にドングリを大きくする。
ドングリを大きくする為には葉一枚当たりの光合成量を増やさなければならないわけで、葉をより大きくしていく。
葉が大きくなると冬季の葉の維持コストが上がってしまう為、落葉性という形質の重要度が増す。
元々、アベマキのような落葉樹の下でも苦にならないカシにとって、アベマキの光合成の質が高まっても競争で不利になることはない(はず)。
若山神社のシイ林を囲むようにカシ林で見たように、森林が大きくなると、アベマキやクヌギの話題が挙がらなくなるのは、カシがアベマキらを森林の外に追いやったからなんだなと思うようになった。
同じ箇所を一年かけて見続けるだけで得られる知見は多いものだと改めて実感した。
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