今までの記事で、作物が虫による食害や病原性微生物の感染に強くなるために、細胞壁、特にリグニンの活用が大事であることを記載し、秀品率を高める為にリグニンの合成が大事では?
という内容を記載してきた。
植物が細胞壁を構成する時、最初にセルロースを主体とし各セルロースを結合させる為にヘミセルロースやペクチンといったものを付着させる一次細胞壁の形成の過程と、一次細胞壁を構成して細胞の分裂が終了した後に、細胞壁を更に強固にするためにリグニン等を付着させる二次細胞壁の形成の過程がある。
リグニンというのはフェニルプロパノイドという物質が複雑に絡み合ったもので、芳香族のアミノ酸を元に合成される。
以上の話を踏まえた上で、植物はカルシウムを使って体を丈夫にするで紹介した
『植物細胞壁』(西谷 和彦,梅澤 俊明)|講談社BOOK倶楽部
植物細胞壁という本の中で、植物種(実際には門)毎の一次細胞壁モデルというものがあったので触れておく。
※引用:『植物細胞壁』(西谷 和彦,梅澤 俊明)|講談社BOOK倶楽部 114ページ
各門毎の一次細胞壁モデルで、セルロースは基本的な骨格だとし、
こんな感じの構成になるようにペクチン、ヘミセルロース(セルロースを除く棒状で表されたもの)や何らかの機能をもった構造タンパク質がセルロースの中に入り込んでいる。
ここで目についたのが、ツユクサ亜網の植物のみ、一次細胞壁の形成の時点でフェニルプロパノイドが含まれている。
フェニルプロパノイドはリグニンを構成するものと記載したけれども、植物性堆肥と土作りの観点から見ると、団粒構造形成時の主成分と見ることが出来る物質でもある。
ツユクサの一次細胞壁にフェニルプロパノイドがある図を見て、以前訪れた場所のことがふと頭に浮かんだ。
今年の夏に訪れた佐賀県のとあるミカン栽培を辞めたところで、マルバツユクサという植物が優先種となっていた。
周辺のミカン畑では銅欠乏が頻繁に見られた。
銅はフェニルプロパノイド同士を繋げる時に働く金属で、ツユクサの一次細胞壁には互いに結合する前のフェニルプロパノイドがある。
これは偶然なのか?
もしくはツユクサの持つ特徴がミカン畑の跡地の環境にマッチしたからなのか?
ツユクサからの何らかのメッセージ性を感じる。