前回の植物のオートファジーの記事で植物でのオートファジーのざっくりとした内容を見た。


Macro-micro-autophagy

Emma Farmer (-- Serephinetalk - 10:28, 21 April 2007 (UTC)) - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる


今回は更に踏み込んで、オートファジーの制御について見ていくことにする。


オートファジーを知る上で、吉本 光希著 植物の必須栄養素から考える植物オートファジーの重要性 - Journal of Japanese Biochemical Society 91(5): 652-658 (2019)に興味深い内容が記載されていたので今回はその紹介をする。




上記の論文は生育に必要な栄養素(炭素、窒素、リン等)の欠乏等によってオートファジーがどのように制御されているのか?をまとめたもので、欠乏等と記載したのは、窒素に関しては硝酸態窒素とアンモニア態窒素の施肥で植物の振る舞いが変わる。

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アンモニア態窒素の話は置いといて、他の要素として、リン(P)、炭素(C)、硫黄(S)と亜鉛(Zn)の欠乏について触れていた。

リンは多量一次要素に分類されているので、リンが欠乏している時にオートファジーを経てリサイクルは安易に想像できる。

硫黄は少量であるが超重要で再利用で効率的に発達させたと考えられる要素であるため、硫黄のリサイクルも安易に想像できる。

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今回の論文で興味深い内容として、亜鉛によるオートファジーを挙げていることだ。

世界の農耕地の約半数が亜鉛欠乏土壌であると考えられているが、植物問わず生物全体で亜鉛がタンパクの合成に関与する超重要な要素であり、植物が欠乏していれば、連鎖的に動物も欠乏で不健康になる。

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植物体内で超重要な亜鉛だけれども、農耕地の大半で亜鉛が欠乏しているとなると、亜鉛のオートファジーは注目する価値が非常に高いと言える。

前提として、亜鉛は金属酵素の補因子として結合している為、再利用する為には金属酵素(タンパク)を分解しなければならない。

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上記の理由から亜鉛が欠乏した際にオートファジーが起こるのはなんとなくイメージできるので、オートファジーの詳細は触れないでおく。




亜鉛欠乏でオートファジーがないとどうなるのか?を見てみると、葉緑体で光合成を行う際に常に発生する活性酸素を抑える為に働いている亜鉛イオン要求性酵素であるCu / Zn SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)に亜鉛を再分配できず、葉で活性酸素が蓄積し続け、クロロシス(葉が白化)になる。

※生殖器官への養分転流でも亜鉛の転流が重要となる。

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スーパーオキシドディスムターゼ - Wikipedia


オートファジーはおそらく秀品率に関与するはずなので、今回触れた要素は常に意識しておいた方が良いはずだ。


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