イネのウンカ類への抵抗性の記事に引き続き、イネとウンカ類の事を調べてみる。

どのような水田でウンカの被害が多いか検索してみたら、2013 年度に冬期湛水有機栽培水田において発生したトビイロウンカ(Nilaparvata lugens Stal)被害 - 愛媛県農林水産研究報告 第6号 (2014)という研究報告に辿り着いた。


考察を読むと、冬期灌水有機栽培水田でウンカの被害が増えたそうだ。

ただし、安直に冬期灌水有機栽培水田という栽培方法が悪かったという判断はしてはならず、冬期灌水有機栽培水田から得られた知見に価値があるということを事前に伝えた上で話を進める。


今回の話を進める上で触れておかなければならないのが、冬期灌水有機栽培水田という用語で、


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冬期灌水というのは冬期に水田に水を張りっぱなしにすることで、賛否両論ある管理方法だけれども、稲作の際に硫酸塩系肥料(キーゼライトや石膏)を基肥で使用していなければ問題ないだろう。

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冬期灌水では、収穫時の藁に対して米ぬか等を施肥して水を張る。

土が水に覆われている事によって冬期の寒暖の差が減り、土壌の微生物によって有機物が発酵されて、田植え前に代掻きが不要になるくらい土がトロトロ状態になるそうだ。

冬期灌水 - Wikipedia


田から水を抜かない事により、冬期に水の生き物が定着して、簡易的な生態系が形成される。




冬期灌水有機栽培水田の用語に触れた上で、冒頭の研究報告を読んでみると、調査を行った2013年度はトビイロウンカの被害が多い年であり、9月は残暑で気温が高かった。

冬期灌水と冬期に乾田の水田で大きな差が現れたのが、


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草丈、茎数と葉色がどの乾田よりも高い数値であった。

冬期灌水と乾田の株でケイ酸含有量の差が小さかったとされるので、株内の窒素含有量の差がトビイロウンカの被害の差の要因になったのでは?と考えられる。

冬期に溜め込んだ有機物が9月の高温で引き続き無機化して、イネがその成分を吸収し続ける。


冬期灌水ではNPKといった主要成分の吸収効率が高まる傾向がありそうだけれども、発根促進に関する物理性の改善はないので、窒素 > ミネラルのような吸収パターンになりやすい傾向にあるような気がする。

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冒頭の研究報告は愛媛県で、試験場付近は山陽の花崗岩帯なので、冬期灌水をしても川の水に含まれるミネラルやケイ酸は期待できないよな。

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