土作りのステップアップとしてのエッセンシャル土壌微生物学を薦めるで紹介したエッセンシャル土壌微生物学 作物生産のための基礎 - 講談社を読んでいたら、気になる箇所がいくつかあって、記載されている論文を追っかけた。


そのうちの一つが水田土壌における増田曜子等 鉄還元菌窒素固定の発見と応用―マイクロバイオーム解析から低窒素農業へ― - 土と微生物(Soil Microorganisms) Vol. 74 No. 1, pp. 2–7(2020)でタイトルにある通り、水田土壌において、鉄還元細菌が窒素固定を行っているというもの。

※鉄還元細菌は土壌で普遍的に存在する細菌ではあったけれども、最近発見された理由が解析方法の改善であったという背景がある。



詳細は上の写真のような稲わらがある土壌を灌水して田に水を張った状態にすると、酸素がなくなった土壌で稲わらを分解して、細かくなった糖(もしくは有機酸)からエネルギーを取り出し、そのエネルギーを用いて大気中の窒素ガス(N2)からアンモニア(NH3)を作り出す。


ここでいうエネルギーというのは電子(e-)の事で、窒素固定に必要な電子の他に余剰な電子が発生して、鉄還元細菌は周辺にある鉄を還元する。

キノコは消毒液がお好き?


実際の反応はおそらくだけれども、酸化鉄(Ⅲ)を酸化鉄(Ⅱ)であるはずなので、

Fe2O3 + 2e- → 2FeO + O2

で左がFe3+が二個とO2-が三個で構成されていて、鉄イオンが還元される(e-を一つ得る)ことでFe2+になる。


この反応の横で、

N2 + 6H- + 6e- → 2NH3

の反応が起こっている。

※二つの反応式の実際はこんなに単純ではない

【重要】重要だけど扱いにくいものでもある二価鉄


二つの反応式で用いられている電子は稲わらに含まれる糖を分解した時に得られたものとなっている。

植物は水から得た電子をどうやって蓄えている?




ここで一つ疑問が生じる。



田に水を張ると、鉄還元細菌によって鉄は還元される。

還元されつくされると鉄還元細菌は還元する鉄がなくなるために窒素固定を行う事ができない。


だけれども、水田内では糖や有機酸は分解され続け、余剰の電子は発生し続ける。

これらがそのまま電子という形で維持されるわけはないわけで、水田内ではどのような反応が盛んになるのだろう?


そのうちの一つが温室効果ガスのメタンは水田から発生するの記事で見たメタンだろうか。

いくつか反応があるだろうけれども、そのうちの二酸化炭素呼吸を見ると、

CO2 + 8H2 → CH4 + 2H2O

二酸化炭素の炭素(C)に電子を与えた後、水素(H)で蓋をしてメタン(CH4)が生成される。

このメタンは二酸化炭素よりも温室効果ガスとしての効果は高いとされている。




最近の話題では、冬季の田は乾田にしつつ、



中干しでしっかりと酸素を当てることで定期的に土壌を酸化の状態にすることでメタンの発生を抑える事ができるとされている。

ただし、猛暑日が多い中で中干しの意義を再検討するの記事で触れた通り、中干しはイネの収量を下げる可能性が高いわけで、あまりすべきでない。


冒頭で紹介した本では



稲わらを堆肥にして施用するとメタンの生成は大きく減少するという記載もあったため、メタンの生成は土作りをしていない田において灌水状態にしっぱなしにすることで発生すると見て良いだろう。


余談だけれども、水田でも土を意識すれば、農薬の散布量が減り、農薬の合成と散布に関わるエネルギーが減るわけで、メタンと農薬使用分の温室効果ガスの発生を抑える事に繋がる。

昨今の環境問題の話題は稲作で感と経験に頼らず、他産業では当たり前とされる知識レベルの向上から始めることで解決の糸口が見つかるのだろうなと。

観測していたレンゲ米栽培の田が無事に収穫を迎えたそうです


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