昨日、某SNSに環境に優しい土壌消毒ダゾメットの記事をシェアしたら、下記のコメントがあった。

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アブラナ科ベビーリーフ残渣をすきこみ続けると果菜類のあとのひどい土壌も徐々に復活するのは、今回の内容と関係あるのだろうか、とか考えました。

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このコメントを見て、ふと思い出したものがある。

それは、


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※写真はソルガム(ソルゴー:モロコシ)ではなく、トウモロコシかもしれない

酸性土壌で生きる植物たち


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By Edgar181 (talk) - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link


トウモロコシのアレロケミカルであるDIMBOAのこと。

イネ科緑肥の再考のアレロパシー編


DIMBOAもまた、元々はグルコースが繋がった配糖体(DIMBOA-glc)があって、植物細胞が傷害するとβ-グルコシダーゼが作用して、アグリコン(DIMBOA)になる。

DIMBOA - Wikipedia


長谷川守文 植物の自己防御物質フィトアレキシンの多様性植物は自ら作る多様な抗菌性物質で病原菌に対抗する - 化学と生物 Vol.55, No.8, 2017によると、DIMBOAはフィトアンシピンとして知られており、病原菌や昆虫に対しての防御反応を示すと記載されている。


フィトアンシピンというのはファイトアレキシンにおいて、何らかの外敵な刺激なしに、通常条件下でも常に植物が合成し保持している抗菌性の化合物を指す。

ファイトアレキシン - Wikipedia


DIMBOAの作用について、非常にわかりやすい図があったので紹介しておく。


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※図:山田 小須弥 今日の話題 植物二次代謝産物の多面的な生物活性ベンゾキサジノイド化合物を介した生物機能 - 化学と生物 Vol. 53, No. 10, 2015 649ページより引用


この図を加味して整理すると、葉と根の両方でDIMBOAが存在していて、そのDIMBOAは通常的に合成される。

DIMBOAは根から分泌されて、抗菌作用がありつつ、根にとって有益な根圏微生物群の増殖を活発化させる。

※DIMBOAの抗菌作用についての記述が記載された論文を現時点でまだ発見していない




何故、DIMBOAをこのタイミングで再び話題に挙げたかというと、土壌消毒について見直す時期ではないだろうか?の記事で、作物(特に果菜類)で厄介な病気は土壌消毒では解決することが出来ないという内容を記載した。


深いところに適切に抗菌作用のある物質を行き渡らせる為には緑肥の根というのが有効であるはず。


深くまで根を生やす緑肥を思い浮かべてみると、ソルガム(モロコシ)やセスバニアがあって、ソルガムであればDIMBOAがあるだろうと。


土壌環境を整えてから、酸素供給材等を仕込んでソルガムのタネをまけば、おそらく青枯病菌を一掃出来る可能性は十分あるはず。

酸素供給剤についての可能性に迫る


ここで一つ問題が発生する。


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とちぎさんによる写真ACからの写真


青枯病が頻繁に発生するのはハウス等で果菜類の栽培を行っているところだ。

ハウスにそれなりの投資を行い、夏場の間に市場価値の高い果菜類を栽培する。


土壌消毒の意味合いの強い緑肥の栽培が果菜類の栽培期間と被る為、緑肥を活用すると一作分(一年分)の売上を捨てなければならない。


だから土壌消毒に頼りたくなるけれども、土壌消毒は効かない。

よくある流れでは土から離れて、ベンチや袋栽培を選択することになるだろうけれども、これだと土作りにより利益率が高まり続ける栽培の最大の恩恵を得ることが出来ない。

京都北部の舞鶴全般の土壌の考察

野菜の美味しさとは何だろう?


栽培するハウスと休ませるハウスを設けて、休ませるハウスでは、夏場にソルガムの緑肥を採用して、秋頃から春に向けて収穫できる作物を育てる。

栽培したハウスの翌年は休ませるというローテーションを組む事で、問題はおそらく解決するはず。

※ソルガムは花が咲く直前に鋤き込むことが重要。個体の体積が最も多い状態で鋤き込む


連作しないという決断が出来れば、青枯病の悩みはなくなるはずだ。

合わせて、より美味しい果菜も収穫できるようにもなるはず。


ただし、今回の話はDIMBOAが他の作物の病原性微生物に効くことが前提となる。

仮に効かなかったとしても、有益な根圏微生物群が活発になれば問題ない

植物の根と枯草菌のバイオフィルム

クオラムクエンチングで軟腐病や青枯病の被害を減らせるか?


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